顧客のファン化の第一歩!既存顧客との距離の縮め方は?方法と成功例を詳しく解説
社外アイデア企画室株式会社による企業研究。今回は「既存顧客との距離の縮め方」をテーマにお届けします。
既存顧客に自社のファンになってもらい、末長く購入・利用を続けてもらうには、顧客と企業の距離を縮め、身近な存在に感じてもらうことが得策です。
それでは、どうやって距離を縮めるかといったとき、「CRMツールを導入し、サービスをパーソナライズすること」がまず思い浮かぶでしょう。しかし、これにはコストもリソースもかかるので、導入に頭を抱えてしまう企業も多いのではないでしょうか。
ただ、お金や大きな手間をかけなくても、明日から導入できる「既存顧客のファン化策」はたくさんあります。
そこで今回は「既存顧客との距離の縮め方」を解説するとともに、実践的な対策を紹介します。
目次
既存顧客との
距離を縮めることの重要性
企業は、既存顧客との心の距離を縮めることで、信頼関係を構築でき、顧客ロイヤリティを高めることができます。
距離を縮めるには
人間味を出すことが大事
企業が顧客との距離を縮めるためには、コミュニケーションを重視し、信頼と人間関係の構築を目指すことが何よりも大切です。商品やサービスよりも、担当者の人間性や対応がキーとなります。
企業の発信や顧客リレーションは、ネットやSNSが主流となっている昨今。まったく人間味を出すことなく、商品の魅力だけを発信し、顧客へ訴求することも、もちろん可能です。
しかしこのような時代だからこそ、企業が社員の顔を顧客に見せるなど人間味を出すと、顧客が親近感を持ってくれ、商品・サービスに対する愛着を深めてくれると考えられます。
また「顔が見える顧客リレーション」は他社との差別化に繋がり、簡単に離脱されない継続的な購入・利用にもつながるでしょう。
「人間味溢れる顧客リレーション」が
もたらすメリットは?
顧客と企業も「人と人」。サービスに人間味を持たせることで、信頼関係の構築への第一歩を踏み出すことができます。
企業が積極的に歩み寄ってくれると、顧客は自分が理解され、大切にしてもらえていると感じるでしょう。この「特別感」は顧客の満足度に直結し、顧客が企業に寄せる信頼や愛着がアップ。リピート購買の促進や、友達の紹介にもつながり、LTVの上昇や新たな顧客の獲得をもたらしてくれます。
また、顧客が企業に親近感を抱いてくれると企業のファンになってくれ、一顧客の立場を越え、企業を応援したり支援したりしてくれることも。こういったファンが多くいることは、企業の競争力の向上にも大きく影響します。
深い顧客リレーションを行う
難しさは?
顧客との深い結びつきが大切ということはわかっていても、なかなか施策として踏み切るには、難しさを感じている企業もあるでしょう。主な課題は以下の通りです。
①顧客が「深いリレーション」を
求めていない場合がある
顧客の中には「商品のクオリティがよく、自身にメリットさえあればそれで良い」と考える人が一定数います。そのような顧客に「ぜひお声を寄せてください」とアプローチしても良い反応は返ってこないでしょう。
DMなどで無理に接触回数を増やすことで、企業からの働きかけが煩わしくなり、離れていってしまう顧客もいます。サービスは押し付けるものではなく、「顧客が望む適切な距離」をしっかり見極めることが大切です。
②数値目標が立てづらい
顧客との深いリレーションによりどのくらいの成果を見込めるかを数値化するのは、初めのうちは難しいでしょう。
何%の顧客が好感を示し、LTVが何%上昇するかを求める計算式があるわけではありません。開始当初はまったく感触が掴めない場合もあります。
深い顧客リレーションは長期的なファンを育成することが目的なので、短期目標を立てるより、「3年継続愛顧してくれる顧客を育てる」など、長期スパンで成果を狙うのが良いでしょう。
③ノウハウが確立されていない
D to Cという言葉はECサイトの普及とともに生まれたので、ネット戦略やSNS戦略ばかりが語られ、「信頼関係の構築を目的にした深いリレーションの追求」というポイントはあまり語られることがありません。
そのため、ノウハウが蓄積されておらず、手探りでやらなければいけないので、「どう進めていけば良いかわからない」といったケースが多く見られます。
これに関しては、この後の章で紹介する大手企業の成功例や弊社の顧客事例をぜひ、参考にしてください。
④スケールしない
「リレーションの追求と信頼関係の構築」は一人ひとりの顧客に地道にアプローチするため、大きくスケールすることはありません。そのため、手応えや成果が見えづらく、次第におざなりになってしまう可能性も考えられます。
しかし、「既存顧客が離反しない状態」が確立できると、翌年の売り上げ予測が立てやすくなります。
また、売り上げ全体のうち、既存顧客が占める割合を高水準で維持できると会社の信用にもつながるので、派手なスケールが目指せなくても、既存顧客を手放さない施策はしっかりと取り組む必要があります。
「人間味あふれる顧客リレーション」
小林製薬の革命的なリピート施策を紹介
「あったらいいなをカタチにする」のキャッチコピーで有名な小林製薬。「アイボン」「ケシミン」「消臭元」などユニークなネーミングの商品が多く、家の中を探せば、どの家庭にも一つは小林製薬の商品があるのではないでしょうか。
この小林製薬には、テレビCMをほとんど行わず自社通販のみで扱う健康食品やスキンケアの部門があります。
- 顧客の年齢層が高い
- 定期お届けモデルがメイン
- 売り上げの7割が既存顧客から
という特徴を持ったこの部門。
ここで行われている顧客へ向けた施策は、企業規模の大小に関係なく参考にできるものがたくさんあります。ぜひ、自社の施策の参考にしてみてください。
①既存の概念を破壊
「おもてなし」をNGワードに
「おもてなし」こそが「顧客ファースト」の施策であり、ファン化に絶対必要と考える人は多いでしょう。しかし小林製薬ではあえて「おもてなし」をNGワードにしました。
なぜなら、既存のリピート施策が「顧客のためになっていない」と考えたからです。
通販事業においてはリピート施策が非常に重要。顧客をいかに2回目、3回目の購入に繋げるかをどの企業も必死になって考えているでしょう。
現在、多くの企業が導入している方法は
- 定期購入会員になったら、初回は半額
- 定期契約をしたら初回無料
などです。
定期購入を決めてくれた顧客に対し、初回購入のハードルを下げることは一見、親切に見えますが、これが本当に「おもてなし」といえるでしょうか。最初から定期購入を前提に初回特典をつけ、途中離脱を防ぐために顧客ロイヤリティをあとから高めていく手法は、見方によっては少し乱暴とも言えます。
小林製薬では、初回購入した顧客が自発的に2回目、3回目の購入をしたいと考え、徐々に顧客ロイヤリティが上がっていくのが理想的と考えています。
そのため「定期購入」という考え方を「単品リピート通販」と改め、「おもてなし」をせずに顧客をリピーターに導くことに注力しています。
②サイトやメルマガで社員の顔を見せる
それでは、どうやって顧客をリピーターに導いているのかというと、代表的な施策は「社員の顔を見せる」ことです。
ネットの購入完了画面、メルマガ、DM、あらゆるところに社員の顔写真をのせ、中の人を見せることで顧客に親近感を持ってもらうようにしています。
購入者の多くが高齢者の部門のため、顔が見えることで安心する顧客も多く、企業と顧客の信頼関係構築に大きく奏功。
また、高齢者層はSNSの利用率が低いため、SNSが果たす役割をオンライン販売サイトに担わせるためにも、サイトに社員の顔写真を多くのせ、若者がSNSに感じる双方向コミュニケーションに近づける努力をしています。
③顧客を直接訪問する
小林製薬では、顧客を直接訪問し、キャンペーン商品を届けたり、インタビューをしたりということも行っています。
また、その様子を撮影しコンテンツとしてサイトで公開。顧客が企業に対し、「身近だな」「距離感が近いな」と感じられるよう工夫しています。
④お誕生日メールでは販促しない
いまや多くの企業が顧客に対して行っているお誕生日メール。誕生月にポイントをプレゼントし、購入代金の一部に当てられるというものです。
しかしこれは、商品を購入しなければポイント付与の旨味が享受できないので、結果的に、顧客はお金を使わなければいけません。
「お誕生日おめでとう。プレゼントをあげます」と言いながら、「条件を満たさなければメリットが得られません」というのでは、顧客は祝われている感じがしないでしょう。
そこで、小林製薬では「お誕生日メール」では一切の販促を行わないという施策を立てました。
⑤お誕生日動画では
顧客の名前を呼びかける
小林製薬では、顧客の誕生日に動画を送っています。内容は数年にわたり試行錯誤しバージョンアップを重ねていますが、現在は社員が登場し、顧客の名前を呼びかけてお祝いのメッセージを伝えるというもの。
この形は顧客に感想をヒアリングしてたどり着いたものです。顧客からのフィードバックにあった意見は、
- 登場する社員に名前を名乗ってほしい
- メッセージの中で自分の名前を呼んでほしい
など。これらの意見をそのまま取り入れた動画を小林製薬は作成しました。
小林製薬ほどの会社になると顧客は数万人。「全員の名前を呼ぶことなど可能なのか?」と思うでしょうが、なんと日本の苗字ランキング100番目までをすべて撮影。
一見大変そうに感じるかもしれませんが、撮影・編集さえしてしまえば、あとは顧客データを苗字と誕生日でソートし、該当する名前の動画を送るだけ。この作業を業務に組み込むことは決して大掛かりではありません。
コストやリソースを大きくかけなくても、顧客の心に訴えかけられる施策として、この動画メッセージは、小規模の企業でも取り入れやすいでしょう。
身の回りにたくさんある
「顔を見せる」販促
周囲を見渡して見れば、「顔を見せて顧客にアピールする」という手法はそこかしこに溢れています。その代表例は、スーパーで売っている野菜に貼られた、農家さんのステッカーではないでしょうか。
「この野菜は私たちが作りました」と書かれ、顔写真や産地、こだわりが記載されたステッカーが野菜を包むフィルムに貼ってあることがありますよね。また、野菜コーナーにポップが立てられていることも。
文字だけでなく、顔写真があると、
- こだわって作られた野菜なんだな
- なんだか美味しそう
- 体にも良さそう
とプラスの印象を受け、ついつい手が伸びる人も多いでしょう。
「社員の顔を見せること」は決して難しいことではありません。
- ただステッカーを貼るだけ
- サイトに顔写真を載せるだけ
といった簡単なことでも、顧客が企業に寄せる親近感を醸成することは十分可能。そこからさらに掘り下げ、信頼関係の構築へと進めていくことは、顧客のファン化策の第一歩として非常に有効です。
社外アイデア企画室の顧客事例
社外アイデア企画室ではCRM支援として、
- 顔の見える顧客リレーション
- 顧客のファン化
- ファンコミュニティの育成
などを掛け合わせ、同時進行で行っていく施策を提案しています。
企業と顧客のZOOM座談会では、「中の人」がどのような人なのかを顧客に知ってもらうことが可能です。
また社内ツアーを動画で行い、商品がどのような過程を経て作られているか知ってもらうと、商品に対する安心感を与えることができます。
※顧客事例はこちらからご覧いただけます。
企業が積極的に顧客に顔を見せていくことは、お金をかけずに顧客リレーションを強化する一番の近道。
デジタル時代の今は、顧客が世界中の商品を自分で比較し入手できる状況。この先、生き残っていけるのは「顧客の心」をしっかり捉えられる企業だけといえます。
ぜひ「顔の見えるリレーション」を取り入れ、「顧客のファン化」の推進力をアップしていきましょう。
※こちらの記事は社外アイデア企画室株式会社が配信しているPodcastの内容をまとめたものです。配信は以下よりご視聴いただけます。