「ファンマーケティングの効果」前半:コミュニティ立ち上げの手法を事例を交えて解説
今回は経営コンサルタント・作家・国際的マーケターとして有名な神田昌典氏と、社外アイデア企画室株式会社取締役の西村公児の対談をお届けします。
テーマは「ファンマーケティングのビジネスにおける効果」。
- ファンコミュニティはどう始めればいい?
- どの程度の規模感でやれば効果があるの?
- 継続していくのは難しい?
- ファンマーケティングのこれからは?
と疑問を持っている方は多いでしょう。
この対談ではファンコミュニティのイロハから効果まで、実例を交えながら詳しく語ってもらいました。
画像引用:神田昌典氏公式サイト
◆アルマ・クリエイション株式会社 代表取締役
◆日本最大級の読書会、一般社団法人リードフォーアクション 代表理事
◆『GQ JAPAN』(2007年11月号)で、「日本のトップマーケター」に選出。
◆多数の著書があり2012年にはアマゾン年間ビジネス書売上ランキング第1位。
◆国際的マーケティング賞として知られる「ECHO賞」の国際審査員を務めるなどグローバルに活躍。
◆「売れる広告文の書き方」として有名な「PASONAの法則」の提唱者としても有名。
◆「フォトリーディング」「マインドマップ」「ジーニアスコード」を日本に広めるなど、教育者としての顔ももち、多界隈で多くのファンを有する。
顧客と企業の「新たなフェーズ」が
ファンコミュニティ
私の仲間がね、沖縄にリトリート施設を作るということでクラウドファンディングを募ったら、あっという間に6200万円集まったんですよ。
6200万円を売り上げで立てようと思ったら、なかなか大変ですが、クラウドファンディングだとあっという間に集まっちゃうんですよね。
今日はその、ファンコミュニティで成功するための方程式を伺いたいんです。
顧客は愛着のある商品に対し、もっと意見をいいたい、開発に関わりたいという欲求を持っている。
企業も、顧客の欲求から生まれるアイデアを商品開発に活かしたいと思っている。この流れがどんどん加速しています。
この「企業と顧客の関わり合い」を深めていくためには「新しいフェーズ」を築いていかなければいけないなと。この段階がまさにファンコミュニティの立ち上げから育成なんですよ。
マーケティングプロセスを補完する
ファンコミュニティ
THE MODEL
福田康隆氏の著書。2019年出版。B to Bビジネスのバイブルと呼ばれる。
従来型の営業が、見込み顧客のリスト化からアプローチ、提案、契約、サポートまでを1人が担当するのに対し、THE MODELではプロセスの分業化を推奨。
- リードの獲得を行うマーケティング部門
- リードの選定を行うインサイドセールス部門
- 商談・受注を行う営業部門
- サポートを行うカスタマーサクセス部門
このように分業することで、サービスが属人的になるのを防ぐと同時に、部門ごとのKPIを明確にすることが可能。ITツールで情報共有しながら遂行することで、業務の効率化と売り上げの増大に繋げていく、営業プロセスの改善のためのノウハウ。
ファンコミュニティはこのTHE MODELの足りない部分を補完する役割になるんじゃないかと思うんですよね。
どんな優れたモデルも維持するのがすごく大変。じゃあ、どうやって維持するかといったときに、結局、企業側だけが一生懸命になってもどこかで限界が来るんですよ。
だから企業は活発で健全な情報が行き交う舞台を用意して整備する必要があるんです。
舞台に乗ったファンたちが自走していく仕組みさえ作れば、舞台はより熱く、より大きくなっていくんです。
THE MODELの優れたマーケティングプロセスを自社に取り入れたとしても、最終的には自社のファンコミュニティを作れるかどうかで、その企業の価値は決まっていくんですよね。
「感動体験」はファンが知っている
1回きりの利用で、なかなか2回目の来店に繋がらない。CRM(顧客関係管理)をどう高めていくかという点に課題を感じておられました。
エコリングさんはもともと「感動買取」というのをビジョンに掲げているんですね。こんなものまで買い取ってくれるんだ、こんなに親身になって対応してくれるんだ、という感動をお客様に与えたいと。
この「感動体験」をどう作っていくかという具体案は企業が一方的に考えるより、顧客と一緒に考えていくのがいいですよね。
ファンコミュニティを立ち上げ、ファンと一緒に「感動体験」の具体策を考えていくことが、リピーターの獲得につながっていきますよと。
そして企業は、コミュニティで出た意見を吸い上げ、自社の施策に取り入れていく。これがファンコミュニティの基本です。
今は座談会に10名以上参加されています。(ファンコミュニティ自体の人数は300名近く)
(ファンたちの発案で)具体的に行ったことは、店舗でオリジナルのビンゴゲームなどのイベントを開催して、お友達を連れてきてもらいました。買取店ってなんとなく行きづらいイメージを持っている人がいるじゃないですか。
その後もエコリングは、継続的にファンと一緒に新しい企画を立てて、実施しています。
ファンコミュニティにおいては、企業とファンの連携が途切れないことが大切なので。
あと、「こんなものまで買い取ってくれるのか」ということは、実際に行ってみないとわからない。
それで、「複数回、訪れたくなる雰囲気って何か」といったときに、その答えを持っているのはファンたちなんです。
このポイントは顧客ロイヤリティを高めるためにも絶対的に必要なので、このイベントの成功にはファンの力が大きかったですね。
ファンコミュニティはまさにその実践の場。「店舗でビンゴゲーム」なんて聞くと驚く人もいますが、1回のイベントで4000万円の売り上げが上がっていることからも、ファンコミュニティの影響力や瞬発力は証明されていますよね。
ファンが1人でもコミュニティは
立ち上げられる
画像:(株)エコリングの座談会の様子
それで、集まってくれた人たちと月に1回、オンライン座談会を行いました。
企業に対して愛着を持って「ファンだ」といってくれる方と、企業と当社とで座談会を行って、店舗の改善点を率直にいってもらったり、一緒に企画を考えたり。
座談会の報告は「部活の活動記録」みたいな感じにまとめてホームページに掲載します。そうすると少しずつ興味を持ってくれる人が増えて、参加希望者が増えていく。そうやって徐々に顧客を巻き込んでいくことで、コミュニティは成長していきます。
だから、コミュニティが軌道に乗るまでは、企業やうちのようなファシリテーターなどが、とにかくワクワク感を創出する演出をすることは欠かせません。
まず最初の募集の段階からワクワク感をしっかり提供していきます。そうすると自然と人は集まってくる。巻き込まれてくる。
逆にエネルギーの低い場には人が寄ってこない。どんなに面白いものを提供しようとしても、熱量の低さが透けて見えると、そのコミュニティは立ち上げで失敗するでしょうね。
ファンが何人集まると
コミュニティは自走していく?
画像:社外アイデア企画室(株)が運営する
「女子マーケ部」
座談会に参加しても、ファンが報酬を得られるわけではないんでしょ?
また企業側にとっても不安はありますよね?。ファンを集めたのはいいが、面白いアイデアを出してくれる人がいない、全然話にならない。座談会が盛り上がらないと困るから、明るい性格の知り合いに声をかけて、サクラとして参加してもらおうかなとか。
1時間のオンライン座談会で双方向の会話がうまく成り立つのは10数名が限界でしょう。
50人以上に意見を聞く時はアンケート方式にするなど、人数によって方法を変える必要があります。
ただ、エコリングさんの例でいうと、店舗が全国展開しているので埼玉県だったり広島県だったり、ファンのお住まいがバラバラなんですよね。さまざまな地域・属性のファン同士が交流するうえでオンラインはとても有効です。
画像キャプチャなんかをホームページで使う場合はあらかじめアナウンスして、顔を出したくない人に対してはどう対応するかを、明らかにしておくなど、安心を与える対策はきっちり行わなくてはいけません。
「喜び」を与えて飽きさせない工夫を
例えば、2回、3回と回を追うごとに飽きてしまったり、人間関係が煩わしくなる人が出てきたりとかってないですか?
また、飽きさせない工夫としては、座談会ででたアイデアや改善案に対し、企業がどう取り組んだかのフィードバックを必ずすること。自分たちの意見がどのくらい尊重されたのか、どのくらい役に立ったのか、ということを知ることがファンの喜びにつながるので、フィードバックは細かく徹底的に行うのが大切です。
人は、自分の意見が反映されると「役に立てた」と思って嬉しくなるものじゃないですか。この「喜びを与える」というプロセスは本当に大事。
ホームページに掲載したりSNSや公式LINEを利用して、「これはファンのおかげでできた改善です」ということを積極的に発信していくのが有効ですね。
たった10数名のファンが生み出す強風
このアンバサダーマーケティングは、そもそもSNSのフォロワーが数万人いるような人にアンバサダーを担ってもらわないと、効果が出ないと思うのですが、西村さんの行うファンマーケティングでは、ファンが15人でも成立すると?
この段階で、どれだけ丁寧にタネを発芽させるか。ここが肝です。
企業側がファンコミュニティを活用して、やりたいことをいろいろ提案することは簡単ですけれど、それがファンがやりたいことと違うとギクシャクしちゃうでしょ。切り口が違う、視点がズレているみたいな。こういう齟齬をうまないための努力は絶対に怠ってはいけません。
企業とファン、立場は違っても商品・サービスに対する愛という部分はしっかり繋がっていないと。
ファンコミュニティといっても最初はただの座談会。なんとなくオンライン上に集まっただけの人たち。それをいかにコミュニティに育て上げていくかは、ファシリテーションの質次第なんです。
- 「ワクワク感」を創出して、ファンを集める
- 丁寧にタネを発芽させる
- 上手なファシリテーションでコミュニティらしく育て上げていく
こんな流れになるわけですね。
ファンコミュニティを始めようと思ったとき、何人くらい集まれば成立するのかという点は多くの方が疑問に思っていたことでしょう。
1人でも始められるとなると、立ち上げのハードルはグッと低くなりますよね。ただし、盛り上げていくための「上手なファシリテーション」は大きな課題。また「コミュニティを長く継続していくためには何が必要か」も気になるところですよね。
このあたりは後半でさらに詳しく深掘りしていきます。
※後半の記事はこちらからご覧ください。
※こちらの対談は以下よりご視聴いただけます。