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「ファンマーケティングの効果」後半:コミュニティはプラットフォームに縛られない無形資産

#お役立ち情報  2023.12.08

今回は経営コンサルタント・作家・国際的マーケターとして有名な神田昌典氏と、社外アイデア企画室株式会社取締役の西村公児の対談の後半をお届けいたします。


前半ではファンコミュニティの立ち上げ方やファシリテーションの重要性が語られました。

 

後半では持続の難しさやファンコミュニティの今後について、深掘りしていきます。

 

※前半の記事はこちらからご覧ください。

「ファンマーケティングの効果」前半:コミュニティ立ち上げの手法を事例を交えて解説

ファンコミュニティの可能性は無限大

神田
神田
ファンコミュニティってさまざま業種で活用できますよね。例えば住宅関連の会社で、施主さんのコミュニティを作るとか。不動産なんかもいけますよね。金融系でコミュニティがあれば、投資仲間が作れたり。
業種による向き不向きはありません。もう、あらゆるビジネスで活用できるなって感じますね。
西村
西村
神田
神田
いま僕がやろうとしていることの中にデジタル図書館っていうのがあるんですよ。出版社と組んで、毎月3〜4冊を要約してマインドマップを作成するんです。それを小学校・中学校・高校なんかに提供するんですが、すでに約1000校の先生が登録してくださっています。

 

でね、このデジタル図書館のオーナー権をNFTで販売したら面白いんじゃないかと思うんです。

 

NFT

NFT(Non-Fungible Token)は、ブロックチェーン技術を用いた独自のデジタル資産。個々のトークンが一意で置き換え不可能なもの。

 

デジタルアート、音楽、ゲームアイテム、不動産など、様々なデジタルアセットの所有権を証明するために利用される。NFTはその一意性と透明性により、デジタルアセットの所有権を確立し、取引を可能にする革新的な技術とされている。

 

それ、面白いですね!教育関連に関わりたい人って多いと思うんですよ。自分が支援しているものが、子どもたちの目に触れる図書館にあるって嬉しいじゃないですか。

 

直接的に教育関連の事業をしている人じゃなくても、子どもたちの教育に良い影響を与えたいっていうことは、多くの人が思っていますよね。そういう事業を支援したい人は多いでしょう。

 

売り上げとかお金に関係なく、参加する人はたくさんいると思いますよ。

西村
西村
神田
神田
ありがとうございます。それでね、NFTの販売っていうのは結局メンバーシップなので、あらかじめファンコミュニティを作って広げておくほうが、いざ販売を開始したときにスムーズだと思うんですよ。

 

ただ、どうやって広げていこうかなというところで悩んでまして。

初年度は物珍しさから、それなりの人数を集められる気がしますね。

 

ただコミュニティって2年目以降に持続していけるのかな、広げていけるのかなと不安になる人が多いんですよ。

西村
西村
神田
神田
あと、NFTはコミュニティが活性化していないとダメじゃないですか。できれば再販時に価値が上がっていくような流れを作りたい。

 

そうなるとやっぱりファンコミュニティの「持続性と活性化」っていうのが大事なテーマになってくると思うんです。

デジタル図書館のオーナーが集うファンコミュニティがあったら、きっと盛り上がると思いますよ。

 

子どものとき、学校の勉強が嫌いだった人って一定数いると思うんですけど、知的欲求って多くの人が根源的に持っているんですよね。だから、お金の勉強とか世の中の仕組みとか、大人になってから勉強する人は多いじゃないですか。

 

経済の仕組みとかに興味を持っている学生さんってすごく多い。マインドマップは視覚的に知識が入ってくるし、自分の興味のある情報だけを追っていけるので、ものすごくニーズがあると思います。

西村
西村
神田
神田
ただデジタルだけだと、連鎖反応はあまり起きないのかなと思うので、読書会を開催しようかと。本をきっかけに人と人が出会う場が作れたらなと思うわけです。

 

で、そこにNFTを絡めてトレンドに乗りつつもログをしっかりとっていきたいなと。

その基盤として、ファンコミュニティをうまく作用させたいわけですね。

 

これまで、沸騰させることが難しかった商材でも、やり方さえ間違わなければ沸騰させることはできるんです。

 

お客さんの気持ちを体系的に把握するのが難しいジャンルであっても、コアとなるファンをきっちり育てることができれば、いくらでも沸騰させられます。

 

まず初期の段階からお客さんをきっちり区別するのが大事。差別じゃないですよ。優良なお客さん、反応がよいお客さんを把握してどんどんやり取りして、その方たちから出てくるアイデアを商品・サービスに反映させていく。

 

この積み重ねでコミュニティを少しずつ広げていくのが正攻法です。

西村
西村

 

ファンのペルソナって?

神田
神田
ファンコミュニティのメンバーの方達ってどういうペルソナなんですか?。

 

座談会に参加したりアンケートに答えたりって結構な労力じゃないですか。それを無償でやってくれる人たちってどういう傾向を持つ人たちなのか、すごく不思議なんですよね。

当社、社外アイデア企画室は「女子マーケ部」という女性のコミュニティを持っているんですが、現在2000名以上が参加してくれています。

 

最初は当社の代表、佐々妙美が自身のSNSなどで声がけしたりして2ヶ月で1500人くらい集めて、そこからさらに増えていきました。

 

30代・40代が中心で、働いている方が多いですね。自立している女性で、関東圏が多いですが、北海道から沖縄まで満遍なくいます。

西村
西村
神田
神田
自立しているっていうのは、自分の好きなものがはっきりしているとか、自由になる時間がちゃんとあるってことですね。
さまざまな属性の人がいるので、メンバー全体でペルソナを設定することはできませんが、なにかひとつのことにものすごく詳しい人っているんですよ。

 

この分野について語らせたらうんちくがすごいとか、話が途切れないとか。そういう人が自然と中心メンバーになっていきますね。何かを深く追求している人の言葉って聞き手に刺さりやすいじゃないですか。

 

そういう人が発信者の中心になっていくという傾向はありますね。

西村
西村

 

ファンコミュニティは
「推し活」のようなもの

画像:社外アイデア企画室(株)が運営する
「女子マーケ部」

神田
神田
自分が「推しているもの」、「他人に勧めたくなるくらいハマっているもの」について誰かと語り合いたい、気持ちを共有したいっていう感情がありますよね。ファンコミュニティは同じものに興味を持つ人と、感動を分かち合う場だと思うのですが。
まさにその通りです。自分が愛着を感じているものや贔屓にしているものに関して、さまざまな形で応援するのが「推し活」。

 

マニアックなくらいはまっているものがあると、同じくらいハマっている人と深い話がしたいじゃないですか。でもなかなかそういう相手を見つけるのって難しいですよね。

西村
西村
神田
神田
ハマっていない人に話すとドン引きされてしまったりとかね。
「推し」があると、もともと話好きじゃない人でも、やっぱり語りたくなるものなんです。

 

だから企業がファンコミュニティを用意してくれると、「あぁ、ここでは自由に語っていいんだ」っていう安心感にもつながる。

西村
西村
神田
神田
ファンにとってのびのびと推し活ができる場があるって、嬉しいことですよね。
だから、ファンコミュニティを運営していくうえでは、「企業がファンの意見を吸い上げる場」ではなく「ファンのニーズに応える場」という意識を持つことは絶対的に必要ですね。
西村
西村
神田
神田
ちょっと話は脱線しますが、金融に興味を持つ女性って増えていますよね。NISAとか、みんな当たり前のようにやっていて。これから始めたい人はYouTubeなんかで検索すると解説動画がいっぱい出てくる。

 

いくつか動画をみていくうちに、信頼できる人同士で語り合いたいと思う視聴者って多いと思うんですよね。自分の感性にピッタリ合う人がいたら出会いたいじゃないですか。

個人的に話したいっていう欲求が出てきますよね。
西村
西村
神田
神田
それで、デジタル上でずっと語り合っていた人とオフ会なんかで直接会うと「うわー、会いたかった!」っていう話になりますよね。
でも、同じ「推し」があると、直接会わなくてもデジタル上の付き合いだけで十分に感情を共有できるものなんですよ。もうオンラインのファンコミュニティだけでも十分、「推し仲間と会う」というカテゴリーに入っていると思うんです。

 

デジタルでも深い話ができるとインスピレーションの部分で自分に近い人を見分けられる。共感しあえる機会がたくさんあると「リアルで会っている」のと同じ感覚、満足感が得られるというのはありますね。

西村
西村
神田
神田
そういう他者との繋がりを持つことができて、尚且つ自分が発言することで企業の役に立つこともできるとなると、参加者には大きな充実感があるでしょうね。この充実感はファンがコミュニティから得られるご褒美みたいなものですよね。

 

ファンが正社員になるケースも

画像:イメージ

神田
神田
ただ、それだけのご褒美があっても、やっぱり人って飽きるものじゃないですか。コミュニティへの参加が当たり前になってくると、いつかは飽きてしまうでしょう。

 

この部分ってどうすればいいんですか?社外アドバイザーとか社員とかに採用してランクアップするとか?

確かに15人程度のファンコミュニティだと、あっという間に話が一巡して、飽きてしまう人がで始めることもあるでしょう。

 

うちで支援している会社ではないですが、ファンコミュニティで成功している会社に「ベースフード」っていうのがあるんです。1食で「1日に必要な栄養素の三分の一が取れる完全栄養食」としてパンなんかを出している会社ですね。

 

コンビニでも買えるんですが宅配の定期購入がメインで、ファンコミュニティでは顧客が「美味しい食べ方」のシェアなんかをしています。

 

ダイエット目的でサブスクしている人同士が、目標達成までの過程を互いに励ましあったりとか、書き込みがすごく活発。会員はいま2万人くらいいるんです。

 

でもね、最初からコミュニティが上手くいっていたわけではありません。最初は全然盛り上がらないし、会員も増えないし。

西村
西村
神田
神田
じゃあどうやって2万人まで増やしたんですか?
それはもう、企業がファンの意見に丁寧に向き合い続けたんですよ。

 

ファンからの要望を受け入れて、5年間で300くらいのサービス改善を実施して。また、ファンのアイデアに基づく商品開発なんかも繰り返してね。その報告やフィードバックも丁寧に発信し続けていました。

西村
西村
神田
神田
それはファンにとっては嬉しいでしょうね。
自分の意見が企業に受け入れられるとわかると、ファンはさらに熱心に声を上げるようになる

 

さまざまなアイデアを考えて積極的に提案するようになる。その結果、ファンの中から20人くらいが社員として採用されているんです。

西村
西村
神田
神田
もうファンの域を超えて、内部の人になっちゃったわけですね。
「ワークマン女子」の誕生のきっかけになった女性も有名ですよね。もともとは「キャンプ愛好家の間で有名なブロガー」だったんですが、ワークマンの作業着がキャンプで便利に使えることをブログで紹介したら一気に火がついて、売り上げが急増。

 

「男性向け現場作業着」が中心だったワークマンが女性向けのおしゃれなアウトドアウエアを出すようになって、「ワークマン女子」は社会現象にまでなりましたよね。

 

その女性はファンではなくいわゆるアンバサダーとしてワークマンの商品開発に加わるようになったんですが、ついには社外取締役に就任しました。

西村
西村
神田
神田
それはすごいですね。

 

そうすると、ファンコミュニティのメンバーから始まって、企画担当社員みたいな形で採用されるといった流れが、ファンコミュニティジャーニーになっていくんですかね。

ファンの中には、企業への愛着が高じて「中の人」になりたいという人が一定数いるでしょう。その一方で、本業と推し活は区別したいという人も多いので、採用されることがすべてのファンにとってのサクセスロードとはいえません。

 

ただ、ファンと企業は相思相愛関係なわけですから、採用をゴールに据えることを双方が望んでいるのであれば、道筋はつけられますよね。

西村
西村

最初の目標は
「コアなファンを15人集める」

画像:イメージ

神田
神田
ファンコミュニティのあり方について、だいぶイメージがわいてきました。

 

ただ、これをどう事業モデルにするかって、結構悩みのタネじゃないですか?

ファンコミュニティを作りたいと相談に来る企業さんには「すぐに売り上げが上がるとは思わないでください」と必ず話しています。すぐにライフタイムバリューが上がるとか、翌月の売り上げが上昇するということはありませんよと。

 

広告費の5分の1くらいをファンコミュニティに割いて、既存の顧客の満足度をあげていくと考えるといいと思います。

 

新規開拓にばかり力を入れるのではなく既存顧客を大切にしていけば、友達に紹介してくれたり、SNSで発信してくれたりすることがありますよね。ファンコミュニティの価値や効果はなかなか数値化できるものではありませんが、運営にかかる費用や手間は、宣伝や広報の一部と捉えてください。

西村
西村
神田
神田
西村さんの会社は、ファンコミュニティの支援をどうビジネスモデル化しているんですか?
立ち上げと運用を引き受ける形ですね。立ち上げ前には顧客データを見て、優良な顧客、見込みファンがどのくらいいるかなど分析します。

 

立ち上げ後は座談会のファシリテーターを担ったり、企業やファンと一緒に企画を考えたり。またInstagramの運用も一緒に引き受けて、顧客のファン化を促進していくなどですね。

西村
西村
神田
神田
Instagramはフォロワーが数万人いないとみたいな話になりますけど、ファンコミュニティは15人でもいけるとなると、規模感がだいぶ違いますね。
その2つを上手く掛け合わせるのが大切なんですよ。数万人にリーチするのが必要なときもあるし、深い愛着を持った10数人の意見がすごく重要なときもある。

 

実際、コアなファンを15人獲得するよりInstagramのフォロワーを数万人獲得するほうが、簡単なこともあるんですよね。

 

やっぱりね、愛着を持つ15人を作れるかどうかって大きいんです。ファンコミュニティを立ち上げるときには、ここが最初の目標になります。

西村
西村
神田
神田
コアなファンが20人・30人・50人と増えていけば、ものすごい影響力を発揮するようになりますね。
あとはコアなファンに、企業の「アンバサダー」をお願いするケースもあります。

 

5〜15人のファンにアンバサダーに就任してもらって、SNSなんかで積極的に商品・サービスを紹介してもらったりですね。

 

企業の企画会議に参加してもらって、どんどん意見を言ってもらって、商品が開発されていく過程もSNS発信してもらうと、商品が完成する前から、宣伝費をかけずに宣伝することができるでしょ。

西村
西村
神田
神田
アンバサダーのSNSのフォロワーの反応から、販売開始後の購買傾向を予測することもできるでしょうね。
そうなんです。また「発売日が待ち遠しい」というフォロワーのワクワク感を創出することもできる

 

さらに、「自分もアンバサダーになって商品開発に参加したい」と思うファンは、コミュニティへの参加も積極的になっていきますよね。

 

このアンバサダーマーケティングはすごく再現性が高いですね。

西村
西村

 

顧客の人生の「Before/After」を鮮明に

画像:イメージ

神田
神田
やっぱりファンコミュニティっていまの時代にすごくあっていると感じますね。

 

「ビデオテスティモニアル」っていう本があるんですが、これね商品・サービスに対するお客様の声を集めるのかと思ったらそうじゃないんです。

 

じゃあ何を集めるかといったら、顧客のケースストーリーを集めるんです。

 

その商品・サービスによって、顧客の生活がどう変わったかというBefore/Afterを集めるんだと。それがいまのマーケティングには非常に重要だという話なですが、まさにこれってファンコミュニティでやっていることですよね。

まさにファンコミュニティを使って企業がファンから集めたい声ってそれなんですよ。生活・人生においてどんなBefore/Afterがあったのか。こういう話って自然と感動的になりやすいんです。

 

座談会で語ってもらった映像を個々に切り分けてTikTokなんかにアップすると、自然と感動体験の共有ができる。新規顧客を獲得するうえでも、既存顧客をファン化するうえでも「感動体験の共有」って本当に大事なんですよ。

西村
西村
神田
神田
それをシステム化していったら、半年くらいでかなり説得力のあるビデオケースストーリーが作成できますね。

 

あと、もうひとつSNSよりファンコミュニティが優れているなと思うのが、地域密着型の会社に向いていますよね。

 

その地域でしかビジネスしていない会社がSNSに力を入れて世界に発信しても、効果実測できないじゃないですか。

 

かといって、既存顧客の満足度向上に対して、なんの施策も行わないっていうわけにはいかない。

 

そこで力を発揮するのがファンコミュニティじゃないかと。

企業もファンも地域密着型の場合は、すごく有効ですよね。コミュニティはLINEひとつですぐに立ち上げられる。座談会はZOOMがあればOK。

 

リアルの座談会をするならZOOMすらいらない。「ミニマムでいろんな企画ができる」という点で、ファンコミュニティと地域密着型ビジネスは相性がいいですね。

西村
西村

 

ファンコミュニティは無形資産

もう一つ特筆すべき点としてファンコミュニティはプラットフォームに依存していないので、非常に安全なんです。

 

例えばInstagramは一生懸命フォロワーを増やしても、何かの事情でアカウントが停止されたらそれで終わり。また一から始めなきゃいけないじゃないですか。

 

でも、ファンコミュニティは人と企業の繋がりが核なので、いくらでもプラットフォームを載せ替えることができます

西村
西村
神田
神田
載せ替えの自由度も、まさにいまの時代向きですよね。

オンライン・オフラインの切り替えはもちろん、Instagram・YouTube・TikTokやライブコマースなど、本当にプラットフォームは自由。

 

「ファンのコミュニティ」という無形の存在そのものに価値があるんです。

西村
西村

神田
神田
ファンコミュニティは存在そのものが企業にとっての資産なんですね。
きょうは、

  • ファンを募集する
  • 座談会を開く
  • ファンのアイデアを事業に活かす
  • フィードバックを丁寧にする

など立ち上げから軌道に乗るまでのステップを説明しましたが、方法にとらわれる必要はありません。

 

大切なのはファンとどこまで真摯に向き合えるか

 

そして、育ったコミュニティを、資産としてどれだけ大切にできるか。すべてはここに集約されると思っています。

 

大切に育てたファンコミュニティから企業が得られる恩恵は無限大なので、ぜひ多くの企業でマーケティングに取り入れてみてほしいですね。

西村
西村

 

マーケティング界のカリスマ2人が語るファンコミュニティの真髄。AIの登場で、マーケティングはこれから大きく変わっていくだろうといわれていますが、「結局は実直に丁寧にファンと向き合うことが大事」という点で、2人の見解は一致していました。

 

ファンコミュニティの存在は今後、すべてのB to C企業に必須となっていくかもしれませんね。

 

 

※こちらの対談は以下よりご視聴いただけます。

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