ストーリーテリングとは?重要性や効果、やり方を実例を交えて徹底解説
社外アイデア企画室株式会社による企業研究。今回は「ストーリーテリングの重要性とビジネスに活かす方法」をテーマにお届けします。
ストーリーテリングを直訳すると「物語を語ること」。自分の意見や主張、商品の魅力を他者に伝える際に、説得力を増す手法として効果的とされています。
情報も物も溢れている今の時代に自社を売り込もうとするなら、他社との違いをアピールすることが欠かせません。しかし、タイパ(時間対効果)を重要視する人は、長い解説や小難しい説明に耳を傾けてはくれないでしょう。
そこで、効果的に印象を残す方法として有効なのが「人の心を惹きつけるストーリー」。
あなたは自分や自社についてどれだけ魅力的に語れますか?
もし、「魅力を伝えきれていないのでは?」と感じているようでしたら、ぜひこの記事を参考にしてみてくださいね。
目次
ストーリーテリングの重要性
アメリカでは「ストーリーとは魂を宿したデータである」といわれることがあります。
プレゼン・商談・広告・宣伝・マーケティング・SNS発信、どのような形であれ、人は「物語を通して物事を深く理解する」とされており、感情を揺さぶるストーリーは、理論的な説明より何倍も人を惹きつける力を持っています。
さらに、心に響くストーリーは人から人へと伝えられるので強い伝播力を持っています。また、心を揺さぶられた聞き手はあなたの会社や商品のファンになってくれる可能性もあるでしょう。
ビジネスにおけるストーリーテリングは、ブランドのアイデンティティを構築し、顧客とのつながりを深める重要な手段なのです。
ストーリーテリングの効果
ストーリーテリングの効果・効能はさまざまありますが、主には以下の5つが挙げられます。
①ブランドロイヤルティの構築
ストーリーテリングは、製品やサービスの背後にある価値や意義を伝えることで、顧客に感情的な共感を喚起し、ブランドロイヤルティを構築します。
②ブランドと顧客の繋がりの強化
ストーリーテリングは、情報やデータを伝えるだけではなく、人々の心に響く物語を通じてメッセージを伝える能力を持っています。これにより、顧客はブランドに関心を持ち、その物語に共感し、そのブランドとのつながりを強めます。
③理解の深化と平易化
ストーリーテリングは、複雑な概念やアイデアを理解しやすくする効果もあります。物語を通じて情報を伝えることで、顧客はより深く理解しやすくなり、ブランドや製品に興味を持ちやすくなります。
④競合との差別化
ストーリーテリングは、競合他社との差別化にも役立ちます。独自のストーリーを持つことで、ブランドは他社とは異なる存在として認識され、顧客の心に残る印象を与えることができます。
⑤社員の連帯の構築
ストーリーテリングは社外に向けてのみ行われるわけではありません。自社の理念や創業の志を社員に伝える際にも効果的です。ビジョンを明確に共有したり、商品に込めた思いを共有したりすることで、組織の強化を図ることが可能です。
ストーリーテリングの方法
ストーリーテリングを初めてビジネスに取り入れようとしている人は、何から手をつければいいのかと悩んでしまいますよね。また、すでに実践しているが、なかなかうまく効果が上がらないという人もいるでしょう。
ぜひ以下のステップを参考に、ストーリーを構築してみてください。
①目的を明確にする
ビジネスにおけるストーリーテリングの最初のステップは、目的を明確にすることです。
ストーリーが何を達成しようとしているのか、何を伝えたいのかを理解することが重要。
目的を明確にすることで、ストーリーが魅力的で関連性のあるものになり、受け手の興味を引くことができます。
②ターゲットオーディエンスを理解する
ストーリーテリングを効果的に行うためには、ターゲットオーディエンスを理解することが不可欠です。
誰に向けてストーリーを伝えるのかを知ることで、その人々の興味やニーズに合ったストーリーを作成することが可能です。
ターゲットオーディエンスの特性や好みを考慮することで、ストーリーがより効果的に受け入れられます。
③魅力的なキャラクターや
プロットを作成する
魅力的なキャラクターやプロットを使うことで、ストーリーはより生き生きとし、聞き手の興味を引きます。
キャラクターといっても、自社のマスコットを作成するという意味ではありません。キャラクターは社長でも開発者でも、企画者でもいいのです。また、聞き手と同じような立ち位置にいる利用者の一人を主人公にすると、聞き手の共感を得やすいこともあります。
まずは物語の主人公を明確にしましょう。
プロットは「筋書き」のことです。
- 社員が主人公の場合:開発時の失敗や苦労を盛り込む
- 利用者が主人公の場合:悩みを抱えた利用者が、商品の利用により明るさを取り戻す様子を盛り込む
など、マイナスから始まりプラスで終わる筋書きを簡潔に書き出してみてください。
④感情を呼び起こすストーリーを
構築する
感情は人々の行動や決定に大きな影響を与えます。ビジネスストーリーテリングでは、感情を呼び起こすストーリーを構築することが重要です。
喜び、悲しみ、驚き、興奮などの感情を巧みに利用することで、ストーリーは聞き手の心に訴えかけ、記憶に残りやすくなります。
⑤シンプルで明確なメッセージを伝える
ストーリーテリングは、複雑なアイデアやコンセプトを伝える効果的な方法ですが、メッセージが明確でシンプルであることが重要です。
聞き手が理解しやすいように、ストーリーの中心となるメッセージを明確に伝えることで、ストーリーの効果が最大限に発揮されます。
⑥言葉や画像を効果的に組み合わせる
ビジネスストーリーテリングでは、言葉や画像を効果的に組み合わせることも重要です。
適切な言葉の選択や文章構造、またはビジュアル要素の活用によって、ストーリーの魅力や伝達力が向上します。
最近ではとくにInstagramのリールやストーリーズといった機能が伝播力が高いといわれています。効果的な画像や動画と物語をうまく組み合わせることができれば、より多くの興味を引くことができるでしょう。
ストーリーテリングの実例を紹介
株式会社MTG
ここで、ストーリーテリングの実例を一つ紹介します。株式会社MTGは1996年に愛知県で誕生した、美容機器や健康家電のメーカーです。
画像引用:株式会社MTG公式サイト
MTGという会社名は聞いたことがないが、扱っている製品は知っているという人は多いと思います。
お腹にベルトを巻き腹筋を鍛えるSIX PADはサッカーのクリスティアーノ・ロナウド選手と共同で開発され、TVCMで一躍有名になりました。またフェイスラインを引き締める美顔ローラーのReFaは、芸能人の愛用者が多く、世界的なヒットとなりました。
マドンナと化粧品を共同開発したり、製品がアメリカのグラミー賞でギフトラウンジに正式採用されたりと、派手な宣伝ばかりが目につく方もいるでしょうが、品質や安全性にこだわったものづくりが評価され、売り上げを10年間で20倍に伸ばしています。
派手なイメージとは対照的な製品作り
MTGは「ON&DO」という基礎化粧品ブランドを展開していますが、この製品には五島列島の椿が使われています。これは社長が五島市の出身で、島の宝である椿を広く多くの人に知ってもらいたいという思いから始まったそうです。
五島列島には高校までしかなく、進学や就職で若者が島を離れてしまうので、この60年で人口は16万人から6万人程度にまで減少してしまいました。
そんな故郷になんとか貢献したいと、貴重な地域資源である椿を製品化したり、地元の中学校で生徒たちに講義を行ったりという活動を社長自ら行っています。
また、地域資源を活かす取り組みをサスティナブルなビジョンに昇華させ、時代にあった貢献活動を行うことで、ブランドイメージの向上に繋がっているともいえるでしょう。
エビデンスに基づいた開発
MTGのもう一つの特徴として挙げられるのが、しっかりとした技術やエビデンスに基づいて製品作りが行われている点です。
「商品の効果に関するエビデンスがしっかりしていれば消費者の安心感につながる。それが何よりのサービスである」という考えに基づき、エビデンスを取ることや論文として学術的な場で発表することにこだわっています。
社員一人ひとりに焦点をあてた企業理念
MTGの企業理念は「一人ひかる 皆ひかる 何もかもひかる」。まずは社員一人ひとりが明るく前向きに人生を歩めるようでなくてはいけないと考えているそうです。
そして、一人ひとりが光っていれば、周囲の人たち、顧客、パートナーも輝かすことができ、社会貢献や世界への貢献にも繋がっていくという考えを理念に据えています。
健康意識を高める情報発信
MTGにはNEW PEACEという睡眠グッズのブランドがあり、疲労回復パジャマや、いびき対策枕、温活ブランケットなどを展開。
このブランドのサイトには、睡眠の大切さを広めるためのコンテンツがあります。医師の監修のもと、睡眠が不足するとどうなるのか、良質な睡眠のためには何が必要なのかといった情報を発信。世の中の健康増進に寄与する取り組みを積極的に行っています。
こういう取り組みは、すぐに売上には繋がらないかもしれませんが、良質な睡眠への興味とブランドへの信頼感を同時に育てていくことで、長く広く愛されるブランドへと成長していく足がかりになるでしょう。
有形の製品に無形のストーリー
MTGが展開できるストーリーは無限にあるでしょう。次々にアイデア商品を思いつく社長、実直にデータを集め製品化する開発者、社員一人ひとり、他にはない商品、商品が叶える美や健康、そして消費者。
誰を(何を)主人公にしても物語を紡ぐことができそうなのが、MTGの稀有なところであり強みといえるでしょう。
とくに利用者を主人公にした物語は、新たな消費者を呼び込むのに有効。同じような境遇の人の共感を得るだけでなく、「親子で愛用する」「親子3代で愛用する」といったストーリーが描ければ、利用者層を一気に拡大することが可能です。
しかし、MTGの展開する商品ストーリーは決して難しいものではありません。「一人でも多くの人が健康で生き生きとした人生を送れるように」といった、多くの人が共感しやすいものになっています。
今や600億円を売り上げ、世界展開する大企業のMTGですが、ストーリー作りのうまさは中小企業や個人で経営を行っている人でも真似できる要素がたくさんあります。
ぜひ、難しく考えず、親しみやすい筋書きを軸にストーリーを書いてみてください。
ストーリーテリングを
ビジネスに活かす際の注意点
ビジネスに上手に取り入れれば非常に効果的なストーリーテリングですが、忘れてはいけない点があります。
それはストーリーテリングとは「コミュニケーション方法の一つ」であるということです。決してお涙頂戴の物語で顧客を篭絡するものではありません。
もちろん、ウソを盛り込むのはもってのほかですが、過度な演出や誇張も避けるべきです。大切なのは聞き手との信頼関係を構築すること。そのための物語であるということを忘れないでください。
また、ストーリーはシンプルで明確であることが重要です。自社製品への熱い思いから、あれやこれやと、たくさん語りたくなることもあるでしょうが、できるだけ「聞き手の心にダイレクトに刺さる」シンプルさを心がけてください。
最後に、ストーリーテリングは継続的なプロセスであることを認識することが重要です。ストーリーを作成し、発信するだけでなく、受け手のフィードバックや反応を受けてストーリーを改善し続けることが必要。常に顧客のニーズや市場の変化に対応し、ストーリーテリングを進化させることが成功の鍵です。
SNSで発信し、フォロワーの反応を見ながら手を加えて改良していくのもいいでしょう。ぜひXやインスタの1投稿からでも始めてみてくださいね。
※こちらの記事は社外アイデア企画室株式会社が配信しているPodcastの内容をまとめたものです。配信は以下よりご視聴いただけます。