ファンコミュニティのメリットとデメリットは?成功事例も紹介
社外アイデア企画室株式会社による企業研究。今回は「ファンコミュニティのメリット・デメリット」をテーマにお届けします。
ファンコミュニティの重要性はわかっていても、「難しそう」「大変そう」と戸惑っている人は多いのではないでしょうか。確かに健全で活発なコミュニティを形成するのは簡単ではありません。しかし、軌道に乗せることができれば、数々のメリットをもたらしてくれるのがファンコミュニティです。
ぜひこの記事を参考に、ファンコミュニティ作りに挑戦してみてください。
目次
ファンコミュニティのメリット
まずはファンコミュニティを作るメリットを解説します。顧客が企業や製品・サービスのファンになってくれることを「顧客のファン化」といいますが、ファンコミュニティはたんなるファンの集合体ではありません。ファンクラブではなく「コミュニティ」を形成することの利点をしっかりおさえましょう。
①顧客ロイヤリティの向上
ファンコミュニティの最大のメリットは顧客ロイヤリティを向上させられる点です。
顧客が製品やサービスに愛着や信頼をよせてくれることを「顧客ロイヤリティ」といいます。顧客ロイヤリティを向上させるために、新しい商品の開発やサービスの拡充はもちろん大切ですが、企業が常にこういったことに全力を注ぎ続けるのは相当な体力が必要です。
そこで有効なのがファンコミュニティ。ファン同士は「同じ対象に関心を持つ人」なので、「自分の好きなものについて、同じように関心を持つ人と語り合いたい」「共感し合いたい」といったファン心理を満足させるための場として機能してくれます。
ファン同士は語り合うことで、愛着をさらに深めます。また製品やサービスに対し、自分が気づくことができた「素晴らしさ」を発信してくれることで、更なる魅力をアピールしてくれます。
他者がアピールする製品・サービスの魅力を目にしたとき、ファンは「ファンになった自分の判断は正しかった」と再認識できるでしょう。自分の判断が肯定されることはどんな人にとってもうれしいことです。この肯定感が顧客ロイヤリティの向上に大きな力を発揮します。
②新たなファンの獲得
熱心なファンは、ファン以外の人にも製品・サービスの素晴らしさを広めたいと思うものです。コミュニティ内にはすでにその製品・サービスを知っている人しかいませんが、まだ知らない人にも「教えてあげたい」というファン心理は新たな顧客を呼び込みます。
また、コミュニティでのやり取りが楽しければ楽しいほど、ほかの人も「誘ってあげたい」と思うでしょう。
このファンの「思いやり」が新たなファン獲得へとリーチしていきます。
③本音ベースの宣伝効果
ファンはどんな広告よりも有効な「広報大使」となってくれます。なぜならファンの声は「正直な利用者の声」にほかならないからです。
ファンは、製品・サービスを購入・利用したからこそファンになってくれた人たちです。彼らの発信は「利用者の本音」であり、まだ購入・利用したことのない人たちが「一番知りたいこと」を知っています。
ファンは製品・サービスの応援者・賛同者ともいえますが、決して盲目的な信者ではないでしょう。いち顧客として冷静に製品・サービスを評価し、不満があれば正直に発信します。企業に改善や改良を求めたい場合も同様です。
こうした正直な発信があるからこそ、まだファンでない人たちは、その製品・サービスを購入・利用するかどうか「検討してみよう」と思えるのです。見込み客に無理に押し売りするのではなく、十分に検討の機会を与え、購入・利用を決めてもらうという場を設けることは、企業の良心や公平性をアピールすることにもなります。
④顧客サポートの効率化
ファンコミュニティは企業が行う顧客サポートの効率化にも大きな助けとなります。
商品・サービスを使っていてわからないことがあったとき、ファンコミュニティがあれば、ファンは自由に疑問を投げかけることができます。うまく活性化しているコミュニティでは、誰がか書き込んだ疑問や質問に、別の誰かが答えたりアドバイスしたりといったケースを数多く見かけることができます。
コミュニティで疑問が解決できれば、次に別の疑問がわいたときも「コミュニティがあるから大丈夫」という大きな安心に繋がります。
こうして、ファンは製品・サービスを利用していて困ったときに、企業に問い合わせるよりもまず、コミュニティに投稿しようと考えます。もちろん、コミュニティがあるからといって、企業はカスタマーサポートをサボっていいわけではありません。
しかし、ファン同士の相互互助の精神は、ときとして企業が行うカスタマーサポートよりファンにとって有益で便利なサポートとなるはずです。
⑤フィードバックの収集
ファンコミュニティは企業にとって、最高の「顧客の声を収集する場」。上手に活用することでマーケティングコストの削減にも効果的です。
コミュニティではファン同士が率直に商品・サービスの感想を述べあっています。
- なぜファンになったか
- どのように利用しているか
- 利用することでどんなメリットが得られたか
- どんな改善を望んでいるか
といったことについて、自発的に自分の言葉で発しているファンの声は、企業にとってどんなアンケートより重要なフィードバックとなるでしょう。
企業はコミュニティから
- 自社の強み
- 改善点
- 期待されていること
を知ることができます。
また、顧客が製品・サービスの利用で、生活・人生にどのようなメリットを得たかを知ることができれば、企業は自社の製品・サービスに大きな自信を持つことができるでしょう。誰かの人生に貢献することができたという思いは、このビジネスを始めてよかった、この製品を開発してよかったという思いに繋がり、従業員のモチベーションにもなります。
さらにファンコミュニティは経営戦略にも大きく役立ちます。ファンのコメント、熱量、ファンの増加傾向などを細かく分析していけばLTVの予測ができるでしょう。
LTV
LTVはLife Time Valueの略で、顧客生涯価値と訳されます。ある顧客が自社の製品・サービスの利用を開始してから終了するまでの間に、どれだけのお金を使うかを表す指標。自社がその顧客からどれだけの利益を得ることができるかを予測するためのものです。
ファンコミュニティの成功事例
ここで完全栄養食として人気の「BASE FOOD(ベースフード)」のコミュニティを成功事例として紹介します。
BASE FOOD
画像引用:BASE FOOD公式サイト
◆メイン商品はパンとパスタ。ビタミンやミネラル、タンパク質や食物繊維など1日に必要な栄養素の3分の1を1食でとることができる「完全栄養食」として誕生。
◆2016年に創業し22年に上場。売上高は98億円。コンビニなど全国1万4千店で販売しているほか、数食分が4週間に1回届く定期購入も可能。
◆会員数は約30万人。そのうちサブスクで購入している人が13万7千人。
アクティブなファンが多い
「BASE FOOD Lab」
BASE FOODのファンコミュニティ「BASE FOOD Lab」の会員は約2万5千人。活発にコメントや「いいね」を行うアクティブな会員が多いのが特徴で、創業から6年で上場に至ったのはファンコミュニティの強さが下支えになったと考えられます。
「ファンの声」をサービスや商品に反映
BASE FOOD Labは決して出だしから好調だったわけではありません。書き込みをしても反応がないといったところからコツコツと丁寧な努力を重ね、ファンの要望を反映したサービス改善は300回以上。
また、コミュニティに寄せられた声を活かした商品の改良も60回以上行ってきました。「自分たちの声が企業に届く」と感じるとファンは企業に対し信頼を寄せるようになります。
また自分たちの声が反映されて誕生した商品には愛着を感じ、積極的に友人・知人に紹介したくなるもの。さらに「自分もBASE FOOD」の一員であるという仲間意識も芽生えます。
こうしてファンがコミュニティの中で「BASE FOODという共同体の参加者」へ成長していくことで、コミュニティが活発化していったと考えられます。
ファンが呼び込む「見込みファン」
BASE FOODでは友達紹介による新規購入者が毎月800人程度います。企業が広報戦略を考えたり広告費をかけたりしなくても、ファンが顧客を呼び、「見込みファン」を増やしてくれる流れが出来上がっているのが「成功しているファンコミュニティの証し」といえるでしょう。
ここで重要なのは通常、企業が行う新規開拓が「見込み顧客」へのアプローチなのに対し、ファンコミュニティは「見込み顧客」を飛び越し「見込みファン」を連れてきてくれるところです。
休眠顧客を眠らせない工夫
BASE FOODでは休眠顧客を眠らせない工夫も行っています。
休眠顧客
一度接点を持った顧客が、何らかの理由で接点を持つのをやめてしまった状態。
- ライフスタイルが変化した
- 商品へ不満がある
- 飽きてしまった
- ほかにもっとよい商品を見つけた
など、顧客が休眠してしまう理由はさまざま。新規顧客の開拓が頭打ちになったときに休眠顧客の掘り起こしをする企業が多い。
BASE FOOD Labに書き込みができるのは定期購入者だけですが、非会員も閲覧は可能。BASE FOODの美味しい食べ方を紹介する書き込みや、BASE FOODを続けるメリットの紹介は休眠顧客が「また購入しようかな」と思うきっかけになります。
会社は新商品の告知を休眠顧客に行うなど、積極的な掘り起こしも行っていますが、再購入率が20%と高水準を誇るのは、ファンコミュニティの存在が大きいでしょう。
コミュニティ参加で商品が生活の一部に
BASE FOOD Labではチャレンジ企画も展開しています。みんなで理想の体を目指す「1ヶ月集中プログラム」などを行っており、参加方法はコミュニティ内で宣言するだけ。目標や達成度合いを投稿すると管理栄養士からアドバイスがもらえることも。
また毎月、参加者の中から「マスター」が選出される仕組み。頑張りや成果を小まめに投稿することで評価が得られることが、ファンにとってのモチベーションになっています。
この「モチベーション」は「健康になるため」のモチベーションですが、結果的に
- 書き込みが活発化する
- チャレンジと書き込みが生活の一部になる
- 商品の利用が習慣化する
- 知らず知らずのうちに購入を長期継続する
といった作用を生み出しています。
会社とファンの絶妙な距離感
自宅や会社の近くのコンビニにBASE FOODが置いていない場合、ファンはサイトを通じてリクエストを出すことができます。これは、定期購入するほどではないが、欲しいときに気軽に食べたいといったライトファンの期待に答えるサービスです。
また、BASE FOODはこれまでファンコミュニティの会員から20人を社員として採用しています。商品への愛が評価されたのか、サービスへの洞察が優れていたのかは分かりませんが、ファンが採用につながるのは珍しいこと。コアファンの純粋な情熱が企業に届いたといえるでしょう。
このようにライトファンからコアファンまで絶妙な距離感で向き合うBASE FOOD。「ファンとの距離の取り方」はファンコミュニティを運営していく上で欠くことのできない要素です。
ファンコミュニティのデメリットは?
ここまで、ファンコミュニティのメリットと成功事例を紹介してきました。それではファンコミュニティにはデメリットはあるのでしょうか。
その答えは「正しく運営すればデメリットはない」です。それではここから、正しく運営するための注意点を解説します。
①軌道に乗るまでに時間がかかる
ファンコミュニティは軌道に乗るまで時間がかかるもの。作成したはいいが、思うように会員数が伸びない、活性化していかないと頭を悩ませている企業はたくさんあります。
まず顧客をファンへと育て、深い愛着を持ったコアファンに育て、さらにロイヤリティを高めてコミュニティの参加者へと育てていく。このプロセスは一朝一夕には成し遂げられません。
コミュニティの立ち上げ期には、忍耐を持って辛抱強く投げかけを行っていかなければいけないでしょう。SNSのように「一発バズれば何とかなるかもしれない」といった淡い期待では、コミュニティを軌道に乗せることはできないと、念頭に置いておいてください。
②見込み客へのアプローチが
おざなりになる
ファンコミュニティを立ち上げると、企業はコミュニティの盛り上げに注力することになります。しかし、ここで新規顧客の開拓がおざなりになるのは禁物です。アイドルグループでも既存ファンを大切にするのと同時に新たなファンを呼び込むことは至上命題でしょう。
ライトファンをコアファンへと育てあげる施策と、新規顧客の獲得は並行して行うことをおすすめします。それぞれアプローチがまったく異なるので、ファンコミュニティを立ち上げたら、2つの戦略を立てなければいけないと心得ましょう。
③古参ファンが閉鎖的な繋がりを
望むことがある
古くからのファンが新たなファンを「新規」「にわか」と呼び、自分たちと区別したがる傾向は、アイドルファンやスポーツファンなどに見られる現象ですが、企業のファンにも起こりうることです。
どのファンも自社の製品・サービスを利用してくれるユーザーであり、企業にとっては平等ですが、長く強く愛着を持ってくれているファンが、場の空気を支配したがる可能性には注意しなければなりません。
ファンコミュニティにおいて大切なのは、「すべてのファンにとって健全で楽しい場であること」。そのために
- ルールの明確化
- 禁止事項の設定
- 雰囲気作り
は、とくに慎重に行ってください。
社外アイデア企画室の企業支援
社外アイデア企画室ではこれまで、さまざまな企業に対しファン作りの支援を行ってきました。
- 顧客ロイヤリティの高め方
- ファンの育て方
- ファンコミュニティの作り方
- ファンの声をサービスに反映する方法
などを企業にアドバイス。企画から実施までを担い、1回の座談会で5,000万円規模の成果を生み出した実績もあります。
素晴らしい志しやプロダクトを持った企業は数多くありますが、ブランド好感度の高め方に迷っている企業が非常に多いのが実情。しかし、その答えはファンの声に耳を傾けることで容易に見つかる場合があります。
ファンマーケティングに興味のある方はぜひこちら「顧客実例」をご覧ください。
※こちらの記事は社外アイデア企画室株式会社が配信しているPodcastの内容をまとめたものです。配信は以下よりご視聴いただけます。