ブランディングとスピード感!B to Cに欠かせない戦略を解説
社外アイデア企画室株式会社による企業研究。今回はB to Cに欠かせない戦略、「ブランディングとスピード感」をテーマにお届けします。
ブランディングという言葉は知っていても、何から始めたらよいかわからないという人は意外と多いもの。またビジネスにはスピード感が大事と思いながらも、具体的にどんなスピードが時代に求められているのか、イメージがわかない人もいるでしょう。
ぜひこのコラムを参考に、自社のブランディングとスピード感を点検してみてください。
目次
B to Cに必要なブランディングとは
企業が、自社や自社の商品・サービスのブランディングを行う際には
- ターゲットとなる顧客を定める
- 共感や信頼を喚起し、自社の価値を高める
- 他社と区別して認識されるようになる
というステップが基本になります。このなかの「共感や信頼を喚起し、自社の価値を高める」という段階で、具体的になにをすればよいかを解説していきます。
①世界観を明確にする
ブランドの世界観が明確でなければB to Cは成立しないといえるほど、世界観は重要です。
例えば、自社製品をネットで販売するとします。ブランドに世界観がなければ、消費者にとってはEコマースで買い物するのと何も変わりません。消費者は毎回、検索で一番安く購入できる方法を探すでしょう。
これではいつまで経っても、自社サイトに消費者を呼び込むことはできません。
世界観の表現の仕方は一通りではありません。例えばAppleの製品は「世界中の人が、説明書がなくても直感的に使える」ということが製品の基本になっています。
また「先進的で洗練されている」というコンセプトはプロダクトデザインだけでなく、パッケージやApple storeのデザインでも徹底されています。
このように世界観の決め方、表し方は多種多様なので、自由に設定することができますが、必ず守らなければいけないポイントは
- 一貫性がある
- 顧客に伝わりやすい
という点です。
②共感されるストーリーを打ち出す
ブランディングで、創業秘話などのストーリーを顧客にシェアすることは数年前から多くの企業が取り入れています。
なぜブランディングにおいてストーリーが必要かというと、ブランドコンセプトが目や耳に訴えかけるものなのに対し、ストーリーは感情に訴えかけるものだからです。
ストーリーは「消費者の共感をよぶ」ために打ち出されます。消費者は共感できる企業に対しては愛着や信頼を寄せてくれるでしょう。そして、セールスコピーが「商品を売る」ために作られるのに対し、ストーリーは「売れ続ける」ことに作用してくれます。
ストーリーはなにも、創業秘話だけではありません。
- なぜこの商品を作ったのか
- 誰が作ったのか
- どうやって作ったのか
- この商品を通じて、なにを伝えたいのか
これらを文章にして表現することは、消費者の感情に訴えかけるだけでなく、従業員の一体感やモチベーションにも大きく作用するでしょう。
③ベネフィットを可視化する
ベネフィットとは「利益・恩恵」などの意味の英単語で、「顧客が商品から得られる利益」のことです。B to Cでは、ベネフィットが大きいほど消費者の関心を引きつけやすいとされています。
ここで注意しなければいけないのが、ベネフィットはメリットとは違うということです。
例)室内空間が広々とした車
メリット:ゆったり座れる。荷物がたくさん積める。
ベネフィット:快適なので、家族や友人と楽しいドライブの時間を過ごせる。
メリットは製品や商品の特徴であるのに対し、ベネフィットはその特徴が消費者にどのような価値を提供できるかがポイント。このベネフィットをしっかり可視化することも、ブランディングには欠かせません。
④「顧客が主人公のストーリー」を大切にする
ブランディングにおいて、見落とされがちなのが「顧客が主人公のストーリー」です。
例えばホームセンターに泡立て器を買いに来たお客さんがいるとします。お客さんが求めているものは何でしょう。「当然、泡立て器!」と思いますか?
お客さんが求めているのは「美味しくホイップされた生クリーム」であり、そのために泡立て器を買いに来たのかもしれません。ではお客さんが求めているのは生クリームでしょうか?
ここでストーリーが終わってしまっては、ブランディングに広がりは出ません。
お客さんが本当に求めているものは、こうした「一連の体験」ではないでしょうか。であるならば、顧客が自分を主人公にした物語を描きやすいほど、商品の魅力は顧客に訴求しやすいと考えられます。
ブランディングにおいては、顧客が「自分のストーリー」を描きやすいように、うまく誘導することも非常に重要です。
B to Cに必要なスピード感とは
次に、B to Cに求められるスピード感について解説します。
ベータ版を恐れない
「ベータ版」はもともとコンピュータの世界で使う言葉で、正式版をリリースする前に、ユーザーに試用してもらうソフトウェアを指します。
Googleは新しいサービスをリリースするとき、画面上部に「β版」と書かれていることがあります。社内でバグ出しを繰り返し、時間をかけ完成版を作るより、ある程度形になった段階で世界中の人に使ってもらい、ユーザーの声に合わせて改良を行ったほうが速く良いものが作れると考えているからです。
「不完全なものを世の中に出すなんて」と思う人がいるかもしれません。しかし、会議室で「あーでもない、こーでもない」と考えている間にどんどん世の中は進んでいきます。完成したときには、
- すでに他社が似たようなサービスをしている
- 時代遅れで、消費者から求められない
ということも起こり得ます。
よいサービスや商品を思いついたら、「とりあえず世の中に投げてみよう」という感覚で、ベータ版であることを引け目に思わず、消費者の反応を見ながら柔軟に改良していくのが、いまの時代のB to Cにはちょうどよいといえるでしょう。
ニューノーマルを恐れない
コロナの流行により、人々の消費行動は大きく変わりました。企業の販売方法や宣伝方法にも大きな変化があったでしょう。しかし、パンデミックによる「新しい常態・ニューノーマル」にも、利益を伸ばした企業はたくさんあります。
ここでもやはり、鍵となったのはスピード感。考え込んで立ち止まってもしょうがないと、思い切ってできることに着手した企業はコロナ禍にあっても堅調に経営を前進させることができたでしょう。
いまはアフターコロナと呼ばれるフェーズですが、今後も別のニューノーマルへと社会が移行していく可能性は十分にあります。そのような事態に備えるためには、「いまこの時代にしか通用しない戦略」ではなく、どんな時代が来てもスピード感を持って戦略を変更できるフットワークの軽さが重要です。
B to Cブランディングの成功事例
ここで、ブランディングとスピード感の2つを大切に、利用者数を伸ばしているおやつのサブスク「snaq.me(スナックミー)」を成功事例として紹介します。
画像引用:snaq.me公式サイト
◆「おやつの時間を価値あるものに」
snaq.meは毎月お菓子が届く、おやつの定期購入サービス。2016年にサービス開始。お菓子という「モノ」を届けるのではなく、おやつという「体験」を届けるコンセプト。
◆ITを活用し顧客の好みを分析
食べきりサイズに個包装されたお菓子8種類が1セット。サービス利用開始時にアンケートで好みや嫌いな食材を回答すると、100種類以上ある中から、テクノロジーが選別し、毎月違うものをが送られてくる。
◆添加物不使用で健康にも配慮
美容やダイエットに気を配る人にもうれしい添加物不使用のおやつを生産。農家へのリスペストや体、心、環境にやさしいサービス展開をモットーにしている。
世界観とストーリーの明確化
snaq.meのコンセプトは「おやつ体験を届ける」。子供のころ「おやつの時間」はたんなるお菓子を食べる時間ではなく、ワクワクしたり楽しんだりする、「心が満たされる時間」だった人が多いでしょう。
大人になり忙しい毎日の中で、そういう時間を失っている人へ、「あの頃のワクワクを届けたい」という明確な世界観を打ち出しています。
ベネフィットの可視化
snaq.meのお菓子は食品添加物不使用。また、一つひとつが食べ切りサイズなのでついつい食べすぎてしまう人にも優しい配慮。
ダイエットはしたい、でもお菓子は食べたいという人が罪悪感を感じることなくおやつ時間を楽しめるようにし、「幸せなひと時が過ごせる」というベネフィットを提示しています。
消費者が主人公のストーリー
snaq.meはサイト内などで、「仕事や家事で疲れたときに」「頑張る自分へのご褒美に」「大切な人への贈り物に」など、おやつを食べるシチュエーションを提示。消費者がそれぞれの状況で、おやつ体験を自分ストーリーとして楽しめる要素を、ブランディングの中に組み込んでいます。
社風もブランディングの一部に
snaq.meでは商品開発や改良にはスピード感を重視。
- まずはやってみる
- 結果をみる
- 改善する
の繰り返しを素早く行うことを大切にしています。また「すべてのサービスに完成はない」とし、常に進化・変化し続けることを信条としているsnaq.me。
「永遠のβ版を目指す」「全力でやってみたことへの失敗は寛大」といった社風も公式サイトで公開し、ブランディングの一部にしています。
ウソや誇張が通用しない
これからのブランディング
これまでのブランディングは、ブランドのイメージをよくすることのみが目的とされ、ときに「印象づくり」に終始している企業もあったでしょう。
しかしSNSの普及などにより、企業にはより透明性が求められ「表面を取り繕うだけ」ではブランドづくりができない時代になりました。ひとたびウソが暴かれれば炎上や不買など、企業にとっては致命的な事態へと発展します。
これからのブランディングは消費者を置き去りにした一方通行の発信では成り立ちません。世界観を伝えるだけでなく、顧客が企業に愛着を感じ、信頼しファンになり応援者になる、というファンマーケティングにおける総合的な取り組みそのものが、これからのブランディングには必要です。
※こちらの記事は社外アイデア企画室株式会社が配信しているPodcastの内容をまとめたものです。配信は以下よりご視聴いただけます。