「ファンマーケティングの効果」後半:コミュニティはプラットフォームに縛られない無形資産
今回は経営コンサルタント・作家・国際的マーケターとして有名な神田昌典氏と、社外アイデア企画室株式会社取締役の西村公児の対談の後半をお届けいたします。
前半ではファンコミュニティの立ち上げ方やファシリテーションの重要性が語られました。
後半では持続の難しさやファンコミュニティの今後について、深掘りしていきます。
※前半の記事はこちらからご覧ください。
ファンコミュニティの可能性は無限大
でね、このデジタル図書館のオーナー権をNFTで販売したら面白いんじゃないかと思うんです。
NFT
NFT(Non-Fungible Token)は、ブロックチェーン技術を用いた独自のデジタル資産。個々のトークンが一意で置き換え不可能なもの。
デジタルアート、音楽、ゲームアイテム、不動産など、様々なデジタルアセットの所有権を証明するために利用される。NFTはその一意性と透明性により、デジタルアセットの所有権を確立し、取引を可能にする革新的な技術とされている。
直接的に教育関連の事業をしている人じゃなくても、子どもたちの教育に良い影響を与えたいっていうことは、多くの人が思っていますよね。そういう事業を支援したい人は多いでしょう。
売り上げとかお金に関係なく、参加する人はたくさんいると思いますよ。
ただ、どうやって広げていこうかなというところで悩んでまして。
ただコミュニティって2年目以降に持続していけるのかな、広げていけるのかなと不安になる人が多いんですよ。
そうなるとやっぱりファンコミュニティの「持続性と活性化」っていうのが大事なテーマになってくると思うんです。
子どものとき、学校の勉強が嫌いだった人って一定数いると思うんですけど、知的欲求って多くの人が根源的に持っているんですよね。だから、お金の勉強とか世の中の仕組みとか、大人になってから勉強する人は多いじゃないですか。
経済の仕組みとかに興味を持っている学生さんってすごく多い。マインドマップは視覚的に知識が入ってくるし、自分の興味のある情報だけを追っていけるので、ものすごくニーズがあると思います。
で、そこにNFTを絡めてトレンドに乗りつつもログをしっかりとっていきたいなと。
これまで、沸騰させることが難しかった商材でも、やり方さえ間違わなければ沸騰させることはできるんです。
お客さんの気持ちを体系的に把握するのが難しいジャンルであっても、コアとなるファンをきっちり育てることができれば、いくらでも沸騰させられます。
まず初期の段階からお客さんをきっちり区別するのが大事。差別じゃないですよ。優良なお客さん、反応がよいお客さんを把握してどんどんやり取りして、その方たちから出てくるアイデアを商品・サービスに反映させていく。
この積み重ねでコミュニティを少しずつ広げていくのが正攻法です。
ファンのペルソナって?
座談会に参加したりアンケートに答えたりって結構な労力じゃないですか。それを無償でやってくれる人たちってどういう傾向を持つ人たちなのか、すごく不思議なんですよね。
最初は当社の代表、佐々妙美が自身のSNSなどで声がけしたりして2ヶ月で1500人くらい集めて、そこからさらに増えていきました。
30代・40代が中心で、働いている方が多いですね。自立している女性で、関東圏が多いですが、北海道から沖縄まで満遍なくいます。
この分野について語らせたらうんちくがすごいとか、話が途切れないとか。そういう人が自然と中心メンバーになっていきますね。何かを深く追求している人の言葉って聞き手に刺さりやすいじゃないですか。
そういう人が発信者の中心になっていくという傾向はありますね。
ファンコミュニティは
「推し活」のようなもの
画像:社外アイデア企画室(株)が運営する
「女子マーケ部」
マニアックなくらいはまっているものがあると、同じくらいハマっている人と深い話がしたいじゃないですか。でもなかなかそういう相手を見つけるのって難しいですよね。
だから企業がファンコミュニティを用意してくれると、「あぁ、ここでは自由に語っていいんだ」っていう安心感にもつながる。
いくつか動画をみていくうちに、信頼できる人同士で語り合いたいと思う視聴者って多いと思うんですよね。自分の感性にピッタリ合う人がいたら出会いたいじゃないですか。
デジタルでも深い話ができるとインスピレーションの部分で自分に近い人を見分けられる。共感しあえる機会がたくさんあると「リアルで会っている」のと同じ感覚、満足感が得られるというのはありますね。
ファンが正社員になるケースも
画像:イメージ
この部分ってどうすればいいんですか?社外アドバイザーとか社員とかに採用してランクアップするとか?
うちで支援している会社ではないですが、ファンコミュニティで成功している会社に「ベースフード」っていうのがあるんです。1食で「1日に必要な栄養素の三分の一が取れる完全栄養食」としてパンなんかを出している会社ですね。
コンビニでも買えるんですが宅配の定期購入がメインで、ファンコミュニティでは顧客が「美味しい食べ方」のシェアなんかをしています。
ダイエット目的でサブスクしている人同士が、目標達成までの過程を互いに励ましあったりとか、書き込みがすごく活発。会員はいま2万人くらいいるんです。
でもね、最初からコミュニティが上手くいっていたわけではありません。最初は全然盛り上がらないし、会員も増えないし。
ファンからの要望を受け入れて、5年間で300くらいのサービス改善を実施して。また、ファンのアイデアに基づく商品開発なんかも繰り返してね。その報告やフィードバックも丁寧に発信し続けていました。
さまざまなアイデアを考えて積極的に提案するようになる。その結果、ファンの中から20人くらいが社員として採用されているんです。
「男性向け現場作業着」が中心だったワークマンが女性向けのおしゃれなアウトドアウエアを出すようになって、「ワークマン女子」は社会現象にまでなりましたよね。
その女性はファンではなくいわゆるアンバサダーとしてワークマンの商品開発に加わるようになったんですが、ついには社外取締役に就任しました。
そうすると、ファンコミュニティのメンバーから始まって、企画担当社員みたいな形で採用されるといった流れが、ファンコミュニティジャーニーになっていくんですかね。
ただ、ファンと企業は相思相愛関係なわけですから、採用をゴールに据えることを双方が望んでいるのであれば、道筋はつけられますよね。
最初の目標は
「コアなファンを15人集める」
画像:イメージ
ただ、これをどう事業モデルにするかって、結構悩みのタネじゃないですか?
広告費の5分の1くらいをファンコミュニティに割いて、既存の顧客の満足度をあげていくと考えるといいと思います。
新規開拓にばかり力を入れるのではなく既存顧客を大切にしていけば、友達に紹介してくれたり、SNSで発信してくれたりすることがありますよね。ファンコミュニティの価値や効果はなかなか数値化できるものではありませんが、運営にかかる費用や手間は、宣伝や広報の一部と捉えてください。
立ち上げ後は座談会のファシリテーターを担ったり、企業やファンと一緒に企画を考えたり。またInstagramの運用も一緒に引き受けて、顧客のファン化を促進していくなどですね。
実際、コアなファンを15人獲得するよりInstagramのフォロワーを数万人獲得するほうが、簡単なこともあるんですよね。
やっぱりね、愛着を持つ15人を作れるかどうかって大きいんです。ファンコミュニティを立ち上げるときには、ここが最初の目標になります。
5〜15人のファンにアンバサダーに就任してもらって、SNSなんかで積極的に商品・サービスを紹介してもらったりですね。
企業の企画会議に参加してもらって、どんどん意見を言ってもらって、商品が開発されていく過程もSNS発信してもらうと、商品が完成する前から、宣伝費をかけずに宣伝することができるでしょ。
さらに、「自分もアンバサダーになって商品開発に参加したい」と思うファンは、コミュニティへの参加も積極的になっていきますよね。
このアンバサダーマーケティングはすごく再現性が高いですね。
顧客の人生の「Before/After」を鮮明に
画像:イメージ
「ビデオテスティモニアル」っていう本があるんですが、これね商品・サービスに対するお客様の声を集めるのかと思ったらそうじゃないんです。
じゃあ何を集めるかといったら、顧客のケースストーリーを集めるんです。
その商品・サービスによって、顧客の生活がどう変わったかというBefore/Afterを集めるんだと。それがいまのマーケティングには非常に重要だという話なですが、まさにこれってファンコミュニティでやっていることですよね。
座談会で語ってもらった映像を個々に切り分けてTikTokなんかにアップすると、自然と感動体験の共有ができる。新規顧客を獲得するうえでも、既存顧客をファン化するうえでも「感動体験の共有」って本当に大事なんですよ。
あと、もうひとつSNSよりファンコミュニティが優れているなと思うのが、地域密着型の会社に向いていますよね。
その地域でしかビジネスしていない会社がSNSに力を入れて世界に発信しても、効果実測できないじゃないですか。
かといって、既存顧客の満足度向上に対して、なんの施策も行わないっていうわけにはいかない。
そこで力を発揮するのがファンコミュニティじゃないかと。
リアルの座談会をするならZOOMすらいらない。「ミニマムでいろんな企画ができる」という点で、ファンコミュニティと地域密着型ビジネスは相性がいいですね。
ファンコミュニティは無形資産
例えばInstagramは一生懸命フォロワーを増やしても、何かの事情でアカウントが停止されたらそれで終わり。また一から始めなきゃいけないじゃないですか。
でも、ファンコミュニティは人と企業の繋がりが核なので、いくらでもプラットフォームを載せ替えることができます。
「ファンのコミュニティ」という無形の存在そのものに価値があるんです。
- ファンを募集する
- 座談会を開く
- ファンのアイデアを事業に活かす
- フィードバックを丁寧にする
など立ち上げから軌道に乗るまでのステップを説明しましたが、方法にとらわれる必要はありません。
大切なのはファンとどこまで真摯に向き合えるか。
そして、育ったコミュニティを、資産としてどれだけ大切にできるか。すべてはここに集約されると思っています。
大切に育てたファンコミュニティから企業が得られる恩恵は無限大なので、ぜひ多くの企業でマーケティングに取り入れてみてほしいですね。
マーケティング界のカリスマ2人が語るファンコミュニティの真髄。AIの登場で、マーケティングはこれから大きく変わっていくだろうといわれていますが、「結局は実直に丁寧にファンと向き合うことが大事」という点で、2人の見解は一致していました。
ファンコミュニティの存在は今後、すべてのB to C企業に必須となっていくかもしれませんね。
※こちらの対談は以下よりご視聴いただけます。