海外ビジネス研究:ベトナム編「企業のベトナム進出・メリットとデメリットを解説」
社外アイデア企画室株式会社による海外ビジネス研究。今回も2023年2月にタイのバンコクで開催されたWAOJE GVF 2023 in バンコク「Global Venture Forum」より、厳選した情報をお届けします。
今回のテーマは「企業の海外進出にベトナムを選ぶ5つのメリット」。
海外進出を検討している方や、日本国内での事業拡大に海外の労働力を導入しようと考えている方に、なぜいまベトナムがおすすめなのかを解説します。
ベトナムはどんな国?
ベトナムは南シナ海に面し、南北に細長く伸びる社会主義共和制国家。都市は北部・中部・南部の3つに分かれています。
北部:ベトナムの首都であり、政治や文化の中心となるハノイ。東南アジア有数の世界都市。旧市街の風情と近代的な高層ビルが混在し、観光地化されていない素のベトナムを知ることができる。
中部:近年リゾート地として注目が集まるダナン。美しい海だけでなく、街自体が世界遺産となっている「ホイアン」など見どころが多く、観光客からの人気はもちろん、ベトナム人富裕層の別荘地としても人気が高い。
南部:ベトナム最大の商業都市、ホーチミン。かつてサイゴンと呼ばれていたこの街の人口は首都ハノイの2倍。最新のファッションやレストランなどが次々と誕生する熱気と活気に満ちた街。
ベトナムに進出する日本企業は?
ハノイ・ダナン・ホーチミンの3都市で日本商工会議所に加入している企業は2,000社以上。
東南アジアではタイの6,000社に次ぎ、インドネシアと同等の企業数です。また、JETROの発表によると企業規模は半数以上が中小企業。大きな工場を必要とする大企業の進出が一巡したことにより、経済が安定し小売が活発になったことで、サービス業が進出しやすくなったことが要因と考えられます。
業種は製造業が一番多く約半数を占めます。そして商業が10%、サービス業が7%。
製造業の進出により雇用が創出され、内需が拡大することで小売などの商業が増加するという、東南アジアの発展における一般的な経済成長を順当にたどっています。
海外進出にベトナムを選ぶ5つのメリット
海外進出や海外の労働力の活用を考えたとき、行き来がしやすい中国を候補地としてあげる人は多いでしょう。
しかし人件費の高騰やコロナ禍の政策の厳しさで、新たな土地を求めている人も多いのが実情。そこで、なぜいまベトナムがおすすめなのかを解説します。
①右肩上がりの経済成長率
ベトナムの経済成長率はここ数年7%以上を維持。中国の経済減速の影響を受けASEANの多くの国の経済が停滞気味の動きを見せるなか、ベトナムは15年近くにわたって安定した経済成長を見せています。
②政府によるビジネスの後押し
かつて、国の規制により外国企業の参入が非常に難しかった時期がありました。しかし2007年にWTO加盟を果たしてからは外資規制が緩和され、いまでは100%外国資本での起業が可能に。
また貿易の自由化も進められていて、貸出金利の引き下げや税制優遇措置が実施されるなど、国がビジネスの発展を後押し。
積極的に外貨を呼び込む体制が整いつつあり、今後、ますますベトナムへの進出がしやすくなっていくと考えられます。
③日本やASEAN諸国・中国へのアクセスのよさ
画像引用:外務省
東京からハノイへは飛行機で5時間ちょっと。時差は2時間なので、行き来するのに大きな障害にはならないでしょう。
またベトナムはASEANの真ん中に位置しているため、周辺国へのアクセスも良好。さらに、中国の上海までは3時間ちょっとで行けるので、アジア経済圏で事業展開をするには好立地といえます。
加えて、政権が安定しているため治安も良く、ビジネスが政治不和に左右される心配が少ないことも安心材料です。
④資源が豊富で物価が安い
コメやコーヒーといった農業が盛んなベトナムは天然資源に恵まれています。南シナ海に面しているため水産資源も豊富。また観光資源も豊富なため、経済活動が活発で上流階級だけでなく中流階級も増加中。
これに伴い物価は上昇傾向ですが、それでもまだ日本の3分の1程度。とくにオフィスビルや住宅の賃料といったランニングコストが東京と比べ格段に抑えられる点は見逃せません。
⑤質の高い労働力
皆さんは、ベトナム人にどのようなイメージをお持ちでしょうか。ベトナム人は真面目で勤勉、そして器用といわれています。
ベトナムの人口は1億人。平均年齢は日本が49歳なのに対し、ベトナムは31歳です。物価が安い分、平均賃金も低いため、人件費を抑えながら若くて勤勉な労働者を集めやすい点は、ベトナム進出の大きな魅力です。
ここで、ベトナム人の勤勉さを表す例を紹介します。
「お値段以上」を実現する
ニトリのハノイ工場
ベトナム進出の成功例として語られることが多いニトリの工場。毎日40フィートのコンテナ約12,000本を船に積み日本へ出荷しています。
5600人の従業員が毎日、変わることなくこれだけの量を出荷できるのはベトナム人の器用さと真面目さがあってのこと。先に進出したインドネシアでは実現できなかったといいます。
アジアのトップを目指すオフショア開発
オフショア開発とは、システム開発を海外の会社に委託することです。ITの開発コストは人件費が占める割合が高いため、人件費の安い国へ委託することで開発コストの削減が見込めます。
国をあげてIT大国を目指すベトナムではここ数年、技術水準の向上が目覚ましく、中国の人件費が高騰している影響もあり、ベトナムにオフショア開発を依頼する日本企業は増加傾向です。
日本企業のシステムやアプリをベトナムに依頼して制作してもらい日本で使う。この流れをサポートする企業も増えており、ベトナムはアジアで1番のオフショア開発の受託国になることを目指しています。
ベトナム進出のデメリット
ベトナム進出にはメリットがある一方で、デメリットもあるので、しっかりおえておきましょう。
インフラ整備の遅れ
ベトナムはもともと農業国家であり、都市国家と比べてインフラの整備がまだまだ行き届いていない部分があります。
土が剥き出しで舗装されていない道路もありますし、交通渋滞も深刻。電車やバスも東京のように行き届いているわけではありません。
離職率の高さ
ベトナム人は真面目で勤勉と紹介しましたが、会社に対する忠誠心が強いというわけではありません。給与額をSNSなどで公開してしまう人が多く、少しでも条件のよい職場に移ろうと考えることから、年間の平均離職率は2割。
人の入れ替えが多いと中間管理職が育たないので、マネージメント力のある人材を見つけられるかは大きな課題となるでしょう。
同じ会社で長く働いてもらうためには、日本とは違った工夫が必要です。ベトナム人は家族や仲間を大切にする気質が強いため、社員旅行や家族同伴のパーティーを定期的に開催するなど親睦を深め、社内の一体感を強めていくことが非常に大切。
また、旧正月には1か月分の給与額をお出し玉として社員に支給するのも一般的です。
ベトナムに進出するなら
どの都市がいいの?
ベトナムのどの都市が進出に向いているかは、実際に足を運んで、その街が自分に合うかを感じてもらうしかありません。
ただ、ハノイは政治の中心なので、手続きがしやすく、法律や税制の変更にも対応しやすいといえるでしょう。ベトナムの景気や情勢に関する情報も収集しやすいので、現地視察をするならハノイから始めると効率的です。
一方、レストランや小売といった商業をするのであればおすすめはホーチミン。街に活気があり国際色も豊か。常に新しいものが生まれる土壌があります。また日本語を話せるベトナム人材も比較的見つけやすいでしょう。
今後、ベトナムで
期待できるビジネスは?
まだまだ経済成長が期待できるベトナムでは、さまざまなビジネスに勝機があると考えられますが、注目はベトナムの新興富裕層を対象にしたビジネスといえるでしょう。
①「おもてなし文化」にフィットするお家アイテム
ベトナムには、大切な友人や客人を自宅に招いてもてなす文化があります。
そこで最近注目されているのが、盆栽や鯉といった自宅をワンランクアップさせるアイテム。風水を意識したインテリアに関心を寄せる人も増えています。
②人にも環境にも優しいオーガニック製品
かつて枯葉剤の影響を大きく受けたベトナムでは、健康意識の高い人が驚くほど多くいます。
食品はもちろん、コスメやヘルスケア用品、リネンにいたるまで、オーガニックをテーマにしたイベントが大盛況になるほど。健康関連の産業は今後大きく伸びていくと考えられます。
③女性の問題をテクノロジーで解決するフェムテック
FemTech(フェムテック)とは、Female(女性)とTechnology(テクノロジー)をあわせた造語。生理や妊娠・出産、また更年期といったこれまであまり大きな声で語られてこなかった問題を、テクノロジーの力で解決していこうというのがフェムテックです。
例えば生理中の不快感を少しでも軽くする、更年期を上手に乗り越えていく、など女性の要望がひとつの産業としてさまざまな国で発展中。健康志向が強く、女性の社会進出が多いベトナムでもフェムテックに注目が集まっており、今後大きく伸びていく分野と考えられます。
ベトナム進出で
失敗しないためのポイント
まず何よりも大切なのはベトナム人の気質への理解です。これはどの国へ進出する場合にもあてはまることですが、現地の人々が持つ国民性・気質・文化・習慣への理解なくしては、海外進出はうまくいきません。
先にも解説したとおり、ベトナム人の離職率の高さは事業展開にあたって大きな課題になるでしょう。しかし、仲間意識を育むことができれば、そのあとの結束や愛社精神は大きな強みになります。
社外アイデア企画室株式会社は、企業の海外進出や海外起業も支援しています。興味のある方はぜひ、お問合せください。
※こちらの記事は社外アイデア企画室株式会社が配信しているPodcastの内容をまとめたものです。配信は以下よりご視聴いただけます。